『約束の冬』

宮本 輝

約束の冬〈上〉

宮本 輝

約束の冬〈下〉

　久しぶりに宮本輝。まさに円熟。蜘蛛が飛ぶという自然現象が文脈にからんでいるところや、人間の欲望と純愛の両面が出てくるところも著者ならではといった感じ。これも映像化したらよいのに。今の日本だと、テレビは視聴率を追う脚色になる傾向があるので、できれば映画がよい。３時間くらいの大作してくれてもよい。

　ただ、一点きになるとこが、登場人物のうち、脇役過ぎる「浩司」。もちろん彼との対比があって「俊国」という人間の中身がよりはっきりするのだけれど、もう少し何か動きを与えてやってもよかったのではないかという読後感も否めない。

　しかし、今までの宮本作品の流れを踏襲してるのですごくいい感じ。『世界の中心で愛を叫ぶ』以来、純愛ブーム到来と言われるが、大人の純愛は宮本輝だろ。オトナはこっちを読むべし。