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娼年

石田 衣良
娼年
 相変わらず、丁寧な情景描写。丁寧すぎて無意味に感じるくらいだ。

 主人公は娼夫の青年だが、その青年曰く「女性もセックスも退屈」という言葉は、生気が無いといわれる現代の若者を象徴しているのだろうか。一方、彼を買う客の多様性もまた、随分と多様。そういった中で、自分がどうやって生きていくべきかを模索する主人公の気持ちの移り変わりの描写が、ストーリーの骨となっているのだろう。

 この文庫本の裏表紙に本作の概要が書かれているけれど、これは「長編恋愛小説」なのだそうだ。しかし、トータル223頁の内容では「長編」とは言い難い。内容も浅い。浅いことが悪いわけではないが、本作については中途半端な感じが否めない。もっと登場人物の内面を掘り下げて書いてもいいくらいだと思う。しかし、それをやると恐らく「売れない」のかもしれない。

 石田衣良の作品の中では、初めて読後感がイマイチだった。これが「人気作家」としての彼の限界なのかもしれない。