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阿弥陀堂だより

南木 佳士
阿弥陀堂だより


 傑作。著者のことは、NHK-BSでやってる「週間ブックレビュー」という番組で知った。「ダイヤモンドダスト」という作品で芥川賞を受賞している作家にして医師。前述の番組でのインタビューを見て、読みたいと思ったので読んでみた。本作は映画化もされている。




 文学かぶれではあるが優しい夫と、医師である妻の夫婦を中心としたストーリー。夫は小説を書くも泣かず飛ばずで、家事の一切を引き受けている。一方、医師である妻は先端医療の第一線で、また、第一人者として働く。そんな中、身近な人の死が引き金となり、妻が心の病となり、夫の生まれ育った田舎に帰ってくる。


 夫の祖母をはじめ、田舎に住む老婆たちの懐の広さに心打たれる。情報の氾濫した中で上手く情報を扱えたとしても、ほとんどそれらの情報に無縁な生活を送る彼女たちの「懐の広さ」に感動する。


 人間を丁寧に描くという点でいえば、石田衣良に匹敵するが、彼が都会のスマートさを芯に含めているのに対し、南木佳士の本作では、都会で或いは先端技術の第一線で働いていた(上記の言い方に従えばじ「上手く情報を扱えた」)人間が、己の限界を知って、人間を様々な面を知ることができるようになっていく。そして、その拠り所を情報に触れることのほとんどない田舎に求める。そして、その素朴さに癒されていく。


 ここ最近では最もおすすめの小説かもしれない。