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ダイヤモンドダスト

 
南木 佳士
ダイヤモンドダスト (文春文庫)


 南木佳士の著作を読むのは2冊目かな。芥川賞受賞作の表題作の他、連作短編3本を含む。

 自らのタイ・カンボジアでの難民医療活動の経験を題材にして、同様にタイ・カンボジアへ赴いた後に帰国した医師・看護士を描く「冬への順応」「長い影」「わかさぎを釣る」。そして、母、妻、父親や担当していた患者の病や死に直面する看護士を描いた「ダイヤモンドダスト」。

 それぞれが、著者の経験をもとにしたのであろう、患者の死に直面した医療従事者の姿が書かれている。そして、ただ悲しむ姿ではなく、人間の感情の複雑な部分を、ときには人の死に対しての慣れや疲れ、または冷めた部分も書かれていて、なにやら考えさせられる感じ。

 最近の売れ筋の小説は都会的なものやいわゆる純愛ものであるが、本作のような「人間が書かれている」小説こそが売れてほしいなと思う。自分ももっとこういうものを読まなくてはと思った。