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打たれ強くなるための読書術

東郷 雄二
打たれ強くなるための読書術 (ちくま新書 705)
 『本を読む本』を読むのは時間がかかるし難しいと感じているならば、本書を読むとよい。著者も明記しているが、『本を読む本』の影響を多大に受けている本。

 「打たれ強くなる」とは「知的に打たれ強くなること」。著者は逆に打たれ弱いということについて、次の点を上げている。



 ・すぐに解答を欲しがる。

 ・どこかに正解がひとつあると信じている。

 ・解答に至る道をひとつ見つけたらそれで満足してしまう。

 ・問題を解くのは得意でも、問題を発見するのは不得手である。

 ・自分の考えを人に論理的に述べる能力が欠如している。



 これらの打たれ弱さを克服するための読書が、成熟した大人の読書であり、知的に打たれ強い読書を行う必要があると説く。前半は、最近の「読書」業界の傾向とそれに対する著者の持論について。少なくともベストセラーはベストセラーとなるべくしてなる理由があり、そのひとつは読みやすさである。そして、それはほとんどの場合「打たれ強さ」を育む読書の対象にはならない。

 また、「何のために読むのか」という点も重要で、それが、「受動的読書」と「能動的読書」の違いにもあらわれてくる。ちなみに、打たれ強い読書とは「能動的読書」の範疇に入る。中盤は「良書に出会うために」という一言に尽きるだろう。本の探し方から「買うか借りるか」という議論についても言及する。とくにどちらかに肩入れするわけでもなく、それぞれの長所・短所を述べている点はわりと客観的と言える。後半は「本を読む」技術について。『本を読む本』が背景にあることは著者が言わなくても間違いないと思える部分。読書の技術を新書レベルで書くとこうなる、ということになるだろうか。



 全体にややスノッブな感じがあるが、お説ごもっとも。「読む」こと自体に興味を持つのであれば、入門としてちょうどよい内容だろう。