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『ノルウェイの森』

 先日、映画化が決まったというニュースをネットで見たときに、以前読んだ内容を思い出そうとしたのだが全く思い出せない。そんで、本棚から探して再度読んでみた。以下、いまさらかもしれないが、一応、ネタバレ注意、と言っておく。
 一見クールに見える主人公の僕(=ワタナベ君)と、彼を取り巻く人間関係。キズキと直子、突撃隊、永沢さんとハツミさん、レイコさん、小林緑、といった面々との出会い、別れ(それは死でもある)、恋愛といった関係を描く。今、列挙して思ったのだが、僕と恋愛関係(?)になる女性は「直子」「緑」といった漢字名であるのに対し、それ以外の女性は「ハツミ」「レイコ」とカタカナ表記がメインだ。特に意味はないかもしれないけど。
 主人公の「僕」と自殺した親友の恋人であった直子との、つかず離れずの複雑な関係を軸に話が展開していく。その間に経験する別れ。それは、友人や知人が急にいなくなってしまうことや、最後に会った後に自殺してしまった寮の先輩の恋人についての回想、さらに直子との最終的な別れといった、「死」と「別れ」に対する思い描かれている。
 一方で、小林緑との出会いと彼女に抱く思いの移り変わり、レイコさんとの出会いと彼女のラストの前に進みだす様に直面する様に、明るい部分も描かれており、前者と対比してバランスがとれている感じが伺える。
 よくわからなかったのはラストで「僕」が小林緑に電話をかける場面で「僕は今どこにいるのだ?」の前後のくだり。これは何度か読み返してみたが素でわからなかった。
 全体的に「僕」の言動はクールな印象で進むのだが、初めて読んだときにはその部分になんとなく「かっこよさ」を感じただけで終わっていた。今回読んでみるとそこではなく、むしろ文章で書かれた「僕」の心情の移り変わりにこそ、本書の醍醐味があるのだろうと感じた。ただただ泣かせるだけではなく、心にしみてきます。
ノルウェイの森(上) 村上春樹 講談社文庫
ノルウェイの森(下) 村上春樹 講談社文庫