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『闇の子供たち』

 アジアでの幼児売春、人身売買の現状を題材にした内容。本書では、子供を売りに出す親、社会問題という認識で立ち向かおうとするNGO、マフィアなどの闇の組織、政府や警察や軍、当事国からみた外国人の思惑といったものが複雑に絡み合う。
 他国で起きている人権問題に対して、それがいけないことだと断罪することは簡単なことだが、事実はあまりにも多方面の利害が絡み合っている。それは実際にその現場にいるものにしかわからないことだ。しかし、それがために口をつぐむべきなのか、或いは、声高に正義-非常に主観的なものだが-を訴えるべきなのか。そういう選択を迫られる内容だったように思う。
 本書では、あまりにひどい有り様を描写している。ひどいと思える自分がまだ正常な範囲だと思ってほっとしたが、それはさておき、ひどい有り様を読んだときには大概の人は憤るものだ。しかし、本書はそれだけでは終わらせない。上記のように読者に葛藤を迫る。それが本書の小説としての凄さだろう。
Amazon.co.jp: 闇の子供たち (幻冬舎文庫): 梁 石日: 本