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『受精』

 医療を題材にした小説といえば、最近は『チーム・バチスタの栄光』が大人気だが、帚木蓬生もその一人。本書は、文庫本723ページと長め。正直、中盤くらいまでは眠ための展開。日本からブラジルに舞台を移すあたりも脈絡が浅い。
 恋人を事故で無くした女性が悲しみに打ちひしがれているところに、ドイツ系の僧侶が現れて「恋人は生きている」と告げる。マインドコントロールで恋人が生きていることを信じ込まされた女性が、勧められるがままにブラジルへ赴き、人工授精を受けに行く。そこに絡むのが歴史上のゴシップ(かどうか不明)、マインドコントロール、生命保険業界と医療の闇な思惑など、中盤以降、展開が加速する。本が分厚いわりに、あるいはそのゆえなのか、内容のバランスがかなり悪い。
 本書のメッセージみたいなものは伝わるものの、小説としての構成のもう少し重きを置いて欲しかったところ。

受精 (角川文庫)

受精 (角川文庫)