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『スロウハイツの神様』

 脚本家、作家、漫画家、画家、映画監督とその志望者たちが共同生活をおくる、もとは古い旅館であるスロウハイツ。その始まりから終わりまでを、彼らのこれまでの生を背景に、相対する視点で描写する。「良いことも悪いことも長くは続かない」。一見楽しそうで幸せそうな彼らの生活も、必ず終わりがある。
 傷を抱えて生きる若者の、それぞれの傷への向きあい方、時間のかけて向き合っていく様子が背景にあって、そのうえで、楽しそうな、ミステリアスな物語が進行する。上下巻構成だが、読み手を飽きさせない。回想や相対的な視点での描写が順次進行するので、時系列が前後する部分があるが、それも適度であって、エンタメ性が高い。終盤はきっちり泣けるエピソード。泣けるものを読んだのは久しぶりだったかもしれない。

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)