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『孤独か、それに等しいもの』

大崎 善生
孤独か、それに等しいもの


 大崎善生には、ノンフィクションの作品もあるようだが、彼の作品を読み始めたのは『パイロットフィッシュ』以降だ。昨年は『アジアンタムブルー』が話題になったし、最近はブレイクしている様子。

 暇つぶしに買った短編集だったが、意外と面白かった。様々な「病み」を抱える人が、それを克服し癒していく短編集。そこには身近な人間の死が自分にもたらした影響(=「病み」と呼ぶことにする)と、それをその後、どのように克服していくのかということが書かれている。過去のボーイフレンドやガールフレンドであったり、双子の妹であったり、母であったり。(「だらだらとこの坂道を下っていこう」は例外か。)そうした身近な死が自分の精神や肉体にもたらした「病み」を結局は押さえつけて生き続けることはできないということ。そして、人間はそれを昇華させ、克服することができるのだということ。そういったメッセージが読めると思う。