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『ワシントンハイツの旋風』

山本 一力
ワシントンハイツの旋風


 作者自身の自伝的小説なのかは確信はない。60年代に起こった事件を節目節目で書いているところは、時代の明確にしたいということなのだろうか。そういった公の事件と対比して、主人公の生活のプライベート性が強調されている。

 当時の若者のハングリーさが書かれているようだが、みんながハングリーだったわけではないこともわかる。主人公がとにかくハングリーに生きているんだということの強調。これが自伝だったら、面白いが作者はナルシストに思える。それでも最後のほうで誠実であることの大切さに気づいた主人公の心情は、ひとつの救いなのだろうか。

 自分に置き換えてみれば、本書の主人公のようなハングリーさとは無縁の生活だ。勢いで生きる生き方は性に合わないということなのだが、一方で、うらやましくもある。それは、心地よい妬みなのかもしれない。