「ぼく」による過去形の語り口調で物語が進むという内容。「ぼく」と「きみ」の恋愛ストーリーで、「きみ」は不治の病であるという典型的なパターンなのだが、それをどうやって料理するのか、石田衣良のお手並み拝見といった感じで読み始めたが、かなりよかった。特に背景や心象の描写が丁寧なところが素晴らしい。題材が目新しいものでないだけに、その良さが際立っているように思う。特に最近読んだ石田作品の中でも、心象の描写に妥協が無い。読む側にとってもリズムがよいのか、文が長すぎず短すぎずで、全体のバランスもすごくよいように感じた。
基本的には恋愛ストーリーなのだが、生と死というテーマ、死別するということについても考えさせられる部分もある。人生の一瞬を切り取って濃厚な味付けをしてしまう。改めて石田衣良のすごさを確認させられた作品だった。
- 作者: 石田衣良
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2009/02/25
- メディア: 文庫
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