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約束

石田 衣良
約束

 またまた石田衣良。短編集。とにかく泣ける。今週、風邪気味だったから通勤の地下鉄の中でもウルウルして鼻水をすすっててもごまかせた。通勤中などにうっかり読むと泣いちゃう可能性大なので要注意。

 友を亡くした少年のココロの痛み。そしてそれを乗り越えていく「約束」。引きこもり、さらには片足を失った少年とその家族の再生を描く「青いエグジット」。少年が死んでしまった父親と交信すること自分と家族の気持ちを救う「天国のベル」真剣な思いで物事に取り組む姿と少しの思いやりで、伴侶を亡くした女性を癒す「冬のライダー」。登校拒否の少年と廃品回収業の老人のココロの通い合いを描く「夕日へ続く道」伴侶の死から立ち直ろうとする女とそれを受け入れる男を描く「ひとり桜」。輪廻のような生と死のあり方を見つめる「ハートストーン」。

 どれも、「死」や「喪失」とそこからの「再生」を描いた短編である。あとがきによれば、筆者は大阪で起きた池田小学校事件に触発されて「約束」を執筆したとのこと。少年を主人公としたものであるが、ココロの痛みを具体的な病名等で記述するなど、そういった部分は夢物語や曖昧な話にしないリアルさがある。

 そして、本作でも相変わらず描写が非常に丁寧だ。本当に丁寧に「書き込んである」という印象だ。淡い描写で読み手に好感を与えるという手法をとる小説もあるが、日本語の本当のよさを感じさせるのはむしろ本作のように丁寧にかかれたものだと思う。