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にぎやかな天地

にぎやかな天地〈上〉 (中公文庫)
にぎやかな天地〈下〉 (中公文庫)
 稀少な豪華限定本」を作る主人公が、発酵食品に関する本を作る過程で関わる人間関係を描いたもの。料理小説とは珍しいと思ったが、そうではなかった。料理に関する知識もあるが、主は人間とその生きる時間。人間の交わりが時間の流れのなかでどのように変容していくのかということ。時間そのものはあり方は職人の手による発酵食品の製造過程でどれほどの位置づけをもつのかということ。そのへんが絡まりあってひとつの小説になっているイメージ。
 と、抽象的なことしか書けないのだが、例えば、関連する内容でいえば食品偽装や構造計算書偽装といった社会の負の出来事に対するメッセージが含まれるなど、使い古されたものではあるが社会風刺も効いた作品になっている。とにかく、日本人が今最も読むべき小説のひとつと断言したい。